ナポリタン

職場の昼休みに、何を食おうかという話になりました。
私は相変わらず社員食堂でしたが、職場の人はコンビニでいつも買っています。
ナポリタンとかにしようかな』
ナポリタン・・・この言葉を聴くたびに私の心は2年前の出来事を思い出します。


当時私はフリーターで生活も決して楽とはいえない状況でした。
一人暮らし、勤務時間の都合などから自炊よりもカップ麺や、ラスクなどのすぐに食べられる簡単で安価なものを主食としていた時期でした。
バイト明けでは開店していないため、睡眠時間を削りながらも食品の買出しのため100均屋へ出かけていました。
彼女とであったのはそんなときです。
彼女は店の端にたたずんでいました。
良く通う店でしたが、彼女を見るのは初めてでした。
ですが、時間や回数なんて関係ありません。
一目ぼれでした。
僕は迷わず彼女を手に取り、家へ帰りました。


それからはまさに夢のような日々でした。
疲れて仕事から帰っても彼女がいる。
仕事から帰るなり、若い獣欲に身を任せ彼女をむさぼることもありました。
休みの日など朝昼夜と・・・
しかし、幸せな日々もそう長くは続きませんでした。
突然彼女がいなくなったのです。


私は探しました。
家の近所から始めて出会ったあの店、それに私の職場の方まで。
ですが、彼女は見つかりませんでした。
私は油断していたのです。
彼女がいつでもそばにあると。
いつでもこの手にすることの出来る存在だと。
大好きだったものを突如として失った悲しみはなかなか埋まることはありませんでした。


それから一年後のことです。
私は当時住んでた家を引越し、違う場所で生活していました。
多少生活が安定していたこともあり自炊が多くなったものの、あまり以前と変わらない生活です。
そんな時、彼女を見かけました。
店こそ違うものの、また100均屋でのことでした。
一年間僕の前から姿を消した彼女。
何も言わず消えていった彼女。
言いたい事はたくさんありました。
悩んで悩んで悩みぬいて、彼女の親元に電話をしようとも思いました。
しかし、それが迷惑をかけることだと知っていたのでやめました。
そんな彼女が今目の前にいる。


私はもう一度彼女を手にしようと思いました。
しかし、何かが違う。
・・・彼女は、すでに私の知っている彼女じゃありませんでした。
一年、たった一年です。
ですが、時として永劫とも思える時間は二人を変えるのには十分な時間でした。
何も言わず私は立ち去りました。
思い出は無理に塗り替えるよりも、美しいまま胸にしまっておいたほうがいい。
当時は素直に言い出せなかったけど、ずっと好きでした・・・


さようなら、私の愛した・・・『焼ナポリ』(ぉ


(『焼ナポリ』とは、2002年当時『赤いきつね』『緑のたぬき』で有名なマルちゃんから出てたカップ焼きそばの亜種で粉末ソースと液体ソースなどでナポリタンぽい味のした商品。一度消えた後1年後に改良された同名の商品が出るが個人的には旧版のほうが好みであった)